KA式泡沫分離装置とは
微細だが気泡量が少ない一般的なベンチュリー式とは異なり、大量の微細気泡を供給することを特徴としている回転翼剪断式の泡沫分離装置です。 圧倒的な気液界面(汚れの吸着場所)を作り出すことで、汚濁物質の除去能が高いだけでなく、気泡量が少ない泡沫分離装置では実現できない、ガス交換機能(酸素供給、炭酸ガス・窒素ガス除去等)を併せ持っています。 一般的な泡沫分離装置がプロテインスキマーと呼ばれるのに対し、多くの機能を持っているKA式泡沫分離装置は水質浄化装置の位置づけで考えられています。
換水と泡沫分離
閉鎖循環など閉鎖性が高い施設でも、1日に数パーセントは海水を交換しています。 海水の交換の際にただ飼育水を排水するのではなく、汚濁物質を濃縮して排水できれば、飼育水の水質をより向上することが可能になります。 泡沫分離装置から排出される泡は汚濁物質を濃縮しているので、換水による排水量を全て泡沫分離装置の泡として排水することで、より効果的な換水をすることができます。
泡沫分離の原理
泡沫分離とは、気体と液体の境界面に汚濁物質が吸着・濃縮する性質を利用し、水中に気泡を供給し、気泡に汚濁物質を吸着・濃縮させ、その気泡を水中より取り除くことで、水中より汚濁物質を除去する浮上分離の一種です。 気泡への吸着量=汚濁物質除去量になるので、分離性能を高めるには気泡量が多いことが必須条件になります。
特徴
@汚濁物質除去能が高い
気泡供給機に自吸式気液混合機「カーヴァスエアレーター」を採用することで、気泡に汚濁物質が効率よく接触し、大量に吸着します。
【性能を高める2大機能】
●回転翼に発生する高負圧で空気を吸引、翼剪断力で空気をカット
→気泡が微細かつ供給量が多い
→気液界面(汚濁物質の吸着場所)の面積が多い
●通気しながら高速で水を動かしている
→攪拌混合力が高い
→汚濁物質と気泡の接触機会が多い
A酸素供給能、脱気能が高い
水中に気体を溶け込ませたり、過剰に溶解している気体を追い出したりするには、大量の気泡を供給することが必要になります。 したがって、@気泡が微細、A気泡の量が多い、B装置の動力が小さいことが重要であり、その一つが欠けても高性能のガス交換能は得られません。
【カーヴァスエアレーターの能力】
●酸素供給能力:2.4kg-O2/KWH(海水)
●送気量:50m3/KWH
B目詰まりしない
【メッシュフィルター、砂ろ過との違い】
フィルターで濾すのではなく気泡に吸着させるので、体表粘液等のコロイド状物質、ビブリオ菌等の細菌類、イカスミ等の微粒子を除去できる。 絶えず新しい気泡(フィルター)を供給し、安定泡沫として除去しているので、定期的な交換、洗浄の必要がない。
【ベンチュリー式との違い】
ベンチュリー式は、気泡発生部分に汚濁物質が接触し、接触部分の形状が細いので目詰まりし易い。 一方、本装置で採用している回転翼剪断式は、気泡発生部に汚濁物質は接触しないので、目詰まりすることが無い。 さらに、目詰まりによる気泡量の減少が起きないので長期間安定した処理ができる。
C瞬時に汚濁物質を除去
生物ろ過が生物による汚濁物質の摂取、分解による除去(生物処理)に対し、泡沫分離は気泡による汚濁物質の吸着、分離による除去(物理処理)なので、処理に要する時間が短い。 そのため、急激な汚濁負荷の増加に対応でき、水質が安定する。
D生物ろ過槽の負荷を軽減できる(ろ材の洗浄頻度の低減)
アンモニア負荷源となるタンパク質を除去することで、生物ろ過槽を小さくできます。 また、負荷が低くなるためろ材の汚れが少なくなり、重労働であるろ材の洗浄間隔を長くすることができます。
E泡の状態から現状の飼育状態を推測できる(診断機能)
泡立ちの主な原因物質は体表粘液です。体表粘液は魚介類の状態によって分泌量が変わるので、 泡の量により魚介類の変化を早期に発見できます。
泡沫分離選定のポイント
泡沫分離装置は気泡で水質を浄化するので、気泡供給機の性能で装置の性能が決まります。 汚濁物質は、気泡にぶつからなくては吸着しないし、吸着場所が少なければ多く吸着しません。 これは当たり前のことですが、実際は気泡の細かさだけが強調され、接触効率と気泡量は論じられていません。 泡沫分離装置に用いられる気泡供給機は、細かいだけでは駄目で、細かくかつ量が多いことが要求されます。 また、気泡と水中の汚濁物質が効率よく接触するために、分離槽内は強く混合されることが要求されます。
より良く使うために【推奨フロー】
泡沫分離装置は、その機能が十分理解されていないため、プラスアルファがあればよい程度に考えられており、コストパフォーマンスではなくイニシャルコストで選定される傾向にあります。
気持程度の汚濁物質を除去するだけであれば、イニシャルコストが安くても導入する価値がありません。 泡沫分離装置は多くの機能を持った水質浄化装置でです。その能力を最大限発揮するシステム設計をすることで、従来のシステムでは得られない良好で安定した水質が維持できます。
そのため、閉鎖循環式養殖では必要不可欠な装置と考えられています。 設計する上で設置場所が最も重要であり、生物ろ過槽の前に組み込み、浄化システムに送水される飼育水の全量を処理します。